脚ブロック

脚ブロックには右脚ブロックと左脚ブロックがあります。また、左脚は前枝と後枝の2本あり単独の左脚前枝ブロックと左脚後枝ブロックがあります。

完全脚ブロックと不完全脚ブロック

完全脚ブロックはQRS幅が0.12秒(3mm)以上となった状態です。

不完全脚ブロックはQRS幅が0.10秒(2.5mm)以上~0.12秒(3mm)未満となった状態です。

左脚ブロック

左脚ブロックは左脚がブロックされているので、心室では右脚に伝導が伝わり右室が先に興奮して、その興奮伝播が遅れて左室に伝わり、後から左室が興奮します(動画参照)。

左脚ブロックの心電図の特徴

V1:r波+深いS波、Ⅰ誘導 & V5:RR’波形

原因

高血圧、虚血性心疾患、心筋症、心サルコイドーシスなど

急性胸部症状+なら虚血性心疾患を強く疑う

左脚前枝ブロックと左脚後枝ブロック

下記単独ブロックに右脚ブロックを併発する事が多いです。

 〇左脚前枝ブロック:単独ブロックの場合もある

 〇左脚後枝ブロック:単独ブロックは稀(左脚後枝が3本ある脚の中で一番太い)

左脚前枝ブロック(左軸偏位)

左脚前枝ブロックでは、左脚後枝のベクトルが強く反映されるため、左軸偏位(-30℃以下)になります(図参照)。

左軸偏位の心電図の特徴は、Ⅱ誘導のR波高よりもS波高の方が波高が高くなる事です。

実際の左軸偏位(左脚前枝ブロック)の心電図

Ⅱ誘導のR波高よりもS波高の方が高いのがわかります。

左脚後枝ブロック(右軸偏位)

左脚後枝ブロックでは、左脚前枝のベクトルが強く反映されるため右軸偏位(110℃以上)になります(図参照)。

右軸偏位の心電図の特徴はⅠ誘導のR波高よりもS波高の方が波高が高くなる事です。

実際の右軸偏位(左脚後枝ブロック)の心電図

Ⅰ誘導のR波高よりもS波高の方が高いのがわかります。

右脚ブロック

右脚ブロックは右脚がブロックされているので、心室では左脚に伝導が伝わり左室が先に興奮して、その興奮伝播が遅れて右室に伝わり、後から右室が興奮します(動画参照)。

右脚ブロックの心電図の特徴

V1:RSR波形、Ⅰ誘導 & V5:幅の広いS波(スラーS)、aVR誘導:幅の広いR波

原因

加齢による事が多い。高血圧、虚血性心疾患

急性胸部症状+なら肺血栓症を強く疑う

右脚ブロックが見られたら

無症候で右脚ブロック単独の場合は、心精査など必要無い事が多いです。
しかし、不完全右脚ブロック(QRS幅:0.1秒以上0.12秒未満)の場合(特に若年者)は心房中隔欠損症の場合もあります。

右脚ブロックの所見は派手で、慣れるとすぐに診断ができます。
しかし、右脚ブロックの診断だけで満足してはいけません。
左室肥大や虚血性心疾患を併発していないか確認して、虚血心疾患の場合は左脚前枝ブロックや左脚後枝ブロックを併発している事もあります。

S1Q3T3パターン

肺塞栓症の患者さんでは、Ⅰ誘導のS波が深い(右軸偏位)+Ⅲ誘導のQ波とT波陰転を認めるS1Q3T3パターンを呈すことが多く、それに右脚ブロックを伴う事もあります。また、胸部誘導で移行帯(R波高とS波高が同じ高さになる誘導)が時計回転(通常はV3,V4が移行帯なのが、V5,V6に偏位する)のも特徴で、前胸部誘導(V1~V4)でT波陰転を認めるなどの所見が出現します。

2枝ブロックと3枝ブロック

2枝ブロック

完全右脚ブロック + 左脚前枝ブロック(左軸偏位)
完全右脚ブロック + 左脚後枝ブロック(右軸偏位)
※左脚前肢+左脚後枝ブロックは、完全左脚ブロックなので2枝ブロックとは言いません。

3枝ブロック

3枝ブロックの心電図所見:完全右脚ブロック + 左軸偏位 + 1度房室ブロック

①右脚がブロック
②左脚前枝がブロック(左軸偏位)
③左脚後枝が危ない(ブロック寸前で伝導遅延があり、PR間隔が長くなる)
 この時の1度房室ブロックは房室結節での伝導遅延という考えではなく、左脚後枝で伝導遅延が起きていると考えます。3枝ブロックから左脚後枝が完全にブロックになると完全房室ブロックになります。

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